『日常世界のラブドール』 〜夢と現実の狭間で〜

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日常世界のラブドール:ギャラリー(Wired Japanese Edition)


アメリカのアーティスト:ローリー・シモンズが、日本が世界に誇るオリエント工業のラブドールをモデルにして制作した美麗な画像集。

日常の何気ない風景の中に、人間そっくりに作られた人形が佇むという構図は現実と非現実の境がぼやけたような、不思議な美しさを醸し出しております。

ちなみにワタシは以前秋葉原でオリエント工業のラブドールの実物を見たことがあるのですが、写真で見るラブドールはとてもリアルなのに、実際に直で見てみると「非常に良く出来るけどやっぱり人形」でしかなく、まだまだ人間そのものとは言えないし、オレはこれにウン十万も使えないなーというのが本音でした。特に肌の質感がなめらかすぎて逆に違和感があったんですよね。
だからもしラブドールの購入を真剣に考えてる人がいたら、写真だけじゃなく絶対に現物を見て決めたほうがイイヨ・・・って、なんでラブドールの購入ガイドをしてるんだオレは(笑)。

でも一方で「人形だからこそイイ!」という人形愛好家チックな気持ちもなんとなくわかるわけで、ぶっちゃけ人間を抱きたいなら風俗にでも行けば済むハナシ、にも関わらずこうしたラブドールの需要があるということは、ただ人間という「リアル」を求めるのではなく、人形というモノでありながら同時に人間っぽいリアルさを持つという、まさに二律背反の要素を持つ存在だからこそ持ちえる、どこか淫靡で背徳的な美しさに惹かれるトコロがあるのだろう。
きっと、ワタシの中にも、どこかに。


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スタレーヴィッチ 「カメラマンの復讐」

ロシアの天才人形アニメーション作家:ラディスラフ・スタレーヴィッチ
( Ladislaw Starewicz:1882-1965)。

今から100年近く前、まだロシア革命も第一次世界大戦さえ始まってないような時代に
作られたのが、この1912年の作品、「カメラマンの復讐(Cameraman's Revenge)」。

カブトムシにトンボ嬢を寝取られたキリギリス君。
仕返しに、カブトムシとトンボ嬢の浮気現場をこっそりカメラで撮影し始める。
一方、カブトムシの妻も、芸術家のバッタと浮気中。
そこにカブトムシが突然帰ってきて大騒ぎ。
愛人のバッタを追い出したカブトムシは、仲直りのため夫婦で映画館に出かける。
すると・・・





すげえ。
これ、本当に100年前の作品か・・・?

確かにフィルムは古いし、セリフも無いけれど、
とにかく昆虫たちのユーモラスな動きが面白すぎる。
(個人的にはトンボ嬢の舞台の前座で登場するカエルの動きがすごく好き)

しかもそんなハイレベルなテクニックを、あくまでカブトムシ夫婦の艶笑話という
心底くだらないストーリー(笑)に惜しげもなく投入しているのがたまらない。

CG全盛の今だからこそ、この昆虫の人形の動きがとても新鮮に見える。
新しいモノは、いつだって古いモノの中にある、という真理を思わせてくれる。



私は10年前、この「カメラマンの復讐」がどうしても見たくて
海外で発売されているというスタレヴィッチのDVDを探しに探しまわり、
2年後やっと大阪の小さな輸入DVDショップで探し当てたときは、それはもう狂喜したものだった。

それが今じゃ、Youtubeで「スタレヴィッチ」もしくは「Cameraman's Revenge」と
打ち込めば、あっさり見れちゃうんだもんなあ・・・・。
しかもオレが買ったDVD未収録の作品までYoutubeで見放題だし・・・。

もちろんYoutubeがある今の方が圧倒的に便利だけど、
かつてあれだけ探したスタレヴィッチのDVDが今ではホコリをかぶっているのを見るたび、
少し切ない気分になってしまう。


ヤン・シュヴァンクマイエル 「男のゲーム」

チェコの変態アニメーター、ヤン・シュヴァンクマイエル。
カルトな作風でファンも多い。

シュヴァンクマイエルの作品はどれも好きなのだけど、
現在サッカーW杯がまだまだ盛り上がってるみたいだから、
1988年作「男のゲーム」を貼り付けてみる。




ビールを飲みながらサッカー中継に見入る中年男。
テレビには中年男と同じ顔をしたサッカー選手が殺しあっている。
不味そうな食べ物。
残酷ながらも、どこか子供の粘土遊びのようにな無邪気な殺人描写の数々。

テーマだのなんだの、深読みしようと思えばいくらでもできるけど、
見ているうちにだんだんバカバカしくなってきて、
「シュヴァンクマイエル、あんた単純にサッカー嫌いなだけやろ?」
と思ってしまう(笑)。


あともうひとつ、1982年作の「対話の可能性」も貼っておこう。
こちらは、「男のゲーム」よりもまだテーマが明快。
人間同士のコミュニケーションの本質を、すごくうまく表現している。




1960-70年代のソ連圧政下のチェコで、製作中止や投獄・亡命を経ながらも
なお表現活動を続けてきたシュヴァンクマイエル。

そういった過去が、きっとシュールでグロテスクな作風に結びついているのだろうけど、
それでもユーモアとアイロニー、そして何よりアニメーションの卓越したセンスによって
独りよがりにならず、ちゃんとエンターテイメントになっているのが
世界中で人気な理由なんだろうね。


ロマン・カチャーノフ 「ミトン」

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ロシアのアニメーション作家:ロマン・カチャーノフ(1921~1993)といえば、
チェブラーシカの人形アニメが有名だけど、ワタシはなんといっても、
この「ミトン」が好きだ。







犬を飼いたいけど、母親に反対されてしょんぼりの女の子。
赤い手袋を犬に見立てて遊んでいると、奇跡が起こって・・・・

三十路キモオタのオッサンである私も、少女の健気さにナミダナミダですよ。
あと登場する犬たちがもう可愛すぎる。
犬好きの人間にはたまらないものがあるんですのよ、奥様。
カチャーノフ、犬好きだったとしか思えない。

そして人形アニメーションの繊細な動き!
キャラクターの動きだけで、喜怒哀楽の感情の動きが伝わってくる。
ちょっとずつ人形を動かしてコマ撮りするという、
1秒のシーンにさえ多大な労力を要する人形アニメにしてこの表現力。
すごすぎる。

DVDにもなったし有名な作品だから知ってるよという人も多いだろうけど、
だまれだまれ。イイモノは何度見てもイイモンさ。
ミトン見て、ささくれた心を癒して、明日もがんばろうぜブラザー。



ポール・ドリエッセン 「卵の殺害(The killing of an egg)」

ポール・ドリエッセン(Paul Driessen)。
個人的に一番好きなアニメーション作家。

ブルブルと震えた描線、ユニークな動き、そしてアイデアの面白さ。
どれをとっても魅力的。

代表作の一つ、「卵の殺害(The killing of an egg) 」
男がゆで卵を食べようとすると、卵の中から「おい、何をする!」という声がして・・・
「因果応報」という言葉が脳裏をよぎる傑作アニメ。




「Oh,what a knight!」
魔王にさらわれたお姫様を助けにいく騎士の冒険物語・・・なのだけど
なんともカッコ悪い騎士のクニャクニャした動きが面白い。
ついに魔王と対峙してからの展開が、バカバカしくて最高。




ドリエッセンの作品で私が一番好きなのは「生存競争(Elbowing)」なのだけど、
動画が発見できませんでした。残念。

現在ドリエッセンの作品は「ティップ・トップ 世界のベストアニメーション」という
DVDで見れます。オススメだよ。



ユーリー・ノルシュテイン 「外套」

ロシアのアニメーション作家、ユーリー・ノルシュテインの作品「外套」を
久々に見たけど、いやもう、何度見てもこの動きはヤバイ。


ect>


ストーリーは、冴えない中年男が家に帰って清書の仕事をして眠るという
なんのドラマもないただの日常描写なのだが、主人公の男の一挙手一投足が
あまりにもリアルすぎて、むしろ薄気味悪さえ感じてしまうインパクトを持っている。

しかもそのキャラの動きが、一人のキャラを細かくパーツ分けした
切り絵をガラス坂の上に配置して、1コマずつ動かしては撮影するという
方法によって作られている(もちろんパソコンなど使わない!)。

そうやって撮影を続けて、すでに30年以上が経過。
それでも今なお作り続けている。その根気に気が遠くなる。
しかも今作っているのが全3部中の第1部・・・・・。

「きっと未完で終わっちゃうんだろうなあ・・・・」
「外套もいいけど、もっと他の作品も作って欲しいなあ・・・」

きっと世界中の誰もが思っているのだろうけど、もうノルシュテインを
止められる者はいない。

宮崎駿を含む世界中のアニメーターが尊敬するユーリー・ノルシュテイン。
天才であることは間違いないけど、同時にこの「外套」にかけられた時間と情熱を思うと、
なにか天才ゆえの狂気を感じてしまう、そんな作品だ。




ユーリー・ノルシュテインの仕事

ユーリー・ノルシュテイン情報サイト。
プロフィール・フィルモグラフィーといった基本的な情報はここで手に入る。

ノルシュテインのほかの作品(「霧につつまれたハリネズミ」、「話の話」など)は
DVDにもなっているし、Youtubeにも落ちてます。なんて便利なネット社会。

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