天然という名の狂気 伝説のバンド『The Shaggs』の衝撃

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きっかけはたまたま見たサイトの記事だった。

ビートルズより重要なバンドと言わしめた史上最悪のロックンロールガールズバンド「THE SHAGGS」って知ってるか?(見る前に飛べ踊れ)








『史上最悪のロックンロールガールズバンド』という肩書きに魅かれて動画の再生ボタンを押した途端、

♪ドタタドタタドタタシャンシャンポンポンポンデチデチデチ
♪びょんびょんびょんびゃんびゃんびゃん


と何やら不穏な空気を醸し出すドラムとギターの音が流れてきて、「うん?演奏前の音合わせかな?」と思ってたら

♪まいぱるず ねーむ いず ふっつ ふっつ (♪ふっつ ふっつ)

とボーカルの脱力感極まりない歌が聴こえだし「うわあ、曲はじまってた!」とビックリしてからの3分間、リズムという概念が始めから存在してないかのような音の混沌の世界に突然巻き込まれ、曲が終わってもしばし呆然状態。一体何なんだこれは?

そのバンドの名は『シャッグス』。1968年(!)のアメリカで実の3姉妹によって結成したグループである。生まれてこのかた、テレビやラジオから流れるポップスやロックに馴染んでいた耳にはシャッグスのインパクトは色んな意味で非常に大きく、その後は何か悪いものにでも憑りつかれたかのようにYoutubeでシャッグスの楽曲を漁り、ついにはリイシューされたシャッグスの1stアルバム『Philosophy of the World』を通販で入手してしまった。CDでよりクリアーになった音で聴くシャッグスは余計に電波度を増しており、酒飲みながら聴くとなんかもうトリップしそう。








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シャッグス(The Shaggs)は、アメリカ合衆国ニューハンプシャー州フリーモント出身の姉妹によって結成された女性ロック・グループである。海外ではワイルド・マン・フィッシャーなどと共にアウトサイダー・アートの音楽(アウトサイダー・ミュージック)の最古の部類といわれる。

シャッグスの演奏技術や歌唱技術には(いわゆるロック・ポップスとしては)まったく見るべきところはなく、世界最悪のロックンロールバンドとして悪名(?)高い。オーソドックスなロック・ポップスをベースとしながら、そのローテクならぬノーテクによってスカム・ミュージックに到達したバンドと位置づけられる。 しかしながら、一説にはフランク・ザッパをして「ビートルズよりも重要なバンド」と言わしめたとされ、技術的な制約から生まれた独創的な音楽性は(トリビュート・アルバムが企画されるほど)後年のバンドにも影響を与えている。(wikipedia「シャッグス」より引用

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「演奏技術や歌唱技術にはまったく見るべきところはなく」と、ウィキ先生にも言い切られちゃったシャッグス。しかしYoutubeに上がってるその他のシャッグスの楽曲を冷静になって聴いてみると、ドラムもギターも明らかに下手だけど、まあ聴くに堪えないほどじゃない。また2人の姉妹によるボーカルも、ぶっきらぼうではあるが飾り気が無いぶん、何とも言えない愛嬌があってワタシは好きだ。そう、ひとつひとつは最低の部類に入るんだとしても、けして最悪と言われるほどじゃない。ただ・・・・・シャッグスの一番の問題はボーカル、ギタ-、ドラム、全てのリズムがことごとくメチャクチャだってこと!(そしてそれこそがシャッグスの魅力でもあるのだけど・・・)。

そしてそれ以上に疑問なのは、なんでコレをレコードにしちゃったのか?ということ。DTMソフトで宅録したりCDに焼いたりと素人でも安価に作れる現代とは違い、1960年末でアルバムを作るにはまず録音するためのスタジオを借り、レコードをプレスするにも業者に頼み、とけっこうな費用がかかるハズ。ヒットが期待できるグループやバンドならともかく、明らかに素人レベルのシャッグスのために、一体誰が金のかかるレコーディングを決意させたのか?そこにはアメリカの片田舎に住むある一人の父親の存在があった━━━。


ニューハンプシャーに住むウィギン家の父、オースティンは自分の娘たちにバンドを組ませ有名になることを夢見た。そこで彼は貧しい生活にも関わらずドロシー、ヘレン、ベティの3姉妹に楽器を買い与え、2年間音楽とボーカルのレッスンに通わせ、さらに音楽の練習に集中できるように娘たちに学校まで辞めさせた。オースティンは娘たちのバンドをシャッグスと命名し(もじゃもじゃの犬・シャギーと、ぎざぎざの髪型・シャグから)、作曲はリードボーカルのドロシーが担当したものの、演奏の指示はすべて父オースティンが行った。アルバム製作のために金を捻出し、スタジオを予約したのも父だった。アルバムの宣伝文を書いたのも父だった。娘たちはできる限り父親の言うがままに演奏し、歌った。

こうして誕生してしまった1stアルバム『Philosophy of the World』は1000枚プレスされた。そして900枚が行方不明になった。当時シャッグスのスタジオワークを担当したエンジニアが持ち逃げしたらしい(理由は不明)。その後もシャッグスは地元で演奏活動を続けるが、1975年にプロデューサーでもあった父・オースティンが死去し、バンドは解散。シャッグスの名はそのまま忘れ去られる・・・ハズだった。

しかしエンジニアが持ち逃げした900枚のアルバムがシャッグスを伝説たらしめるきっかけとなった。二束三文の価値もないと判断されたアルバムはタダで人々に配られ、やがて一部の熱狂的なファンを生み、ついにはフランク・ザッパや、ニルヴァーナのカート・コバーンなどの有名ミュージシャンがシャッグスを絶賛するようになった。世間一般の音楽に倦みきったアーティストが、良くも悪くも音楽理論に縛られていないシャッグスの楽曲に新鮮さを感じたのはわかる気がする。だからってビートルズより重要ってのは、さすがに言い過ぎだと思うケド。

作為が無い。狙ってない。楽器は弾けないけどとにかく何かを訴えたいんだ!というパンク精神ですらなく、ただ「パパにやれって言われたから」という、どーしようもない脱力感。だからシャッグスの楽曲には嫌味やあざとさが一切ない。それこそが自分を含め、今なお人々を引き付けるシャッグスの魅力なのだろう。

こうして様々な偶然と奇跡が重なり、アウトサイダーミュージックの代表格となったシャッグス。1999年にはデビュー30周年を記念してなんと再結成を果たし、デビュー当時と全く変わらない歌声と演奏を披露したという(笑) しかも最後に「もっと勉強してくるわ!」という言葉を残して。なんだか彼女たちを見てると、音楽に限らずどんなことでも、下手だからと悩んだりビビったりしてるより、さっさと行動を起こすことが大事であり、たとえ最初は笑われ傷ついたとしても、続けていれば結果は後からついてくるんだ!と教えてくれてる気がします。まあもっとも、その結果が本人の望んだものじゃない可能性も十二分にあるわけですが(汗)、それでも、ね?




※シャッグスの経歴については書籍『Songs of the Key of Z』(アーウィン・チュシド (著), 喜多村 純 (翻訳))を参考にしました。この本、シャッグスだけじゃなくアメリカ中のアウトサイダーミュージシャンを多数取り上げていて、非常に面白いです。惜しむらくは現在は中古でしか手に入らないこと。Youtubeで色んなアーティストの楽曲が聴ける今だからこそ、ガイドブックとしての価値はより増していると思うんですが。再販求む。





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