『動物のお医者さん』で広がる世界

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「今まで読んだ中で一番好きなマンガは?」と聞かれたら、とても1つに絞れないけど、これまでもこれからも確実にベストの1つに入る作品は間違いなく、佐々木倫子センセイの『動物のお医者さん』である。


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私が高校生の頃(1990年代前半)、手塚治虫の『ブラックジャック』を皮切りに昔のマンガが次々と文庫化され始めた。私が『動物のお医者さん』に出会ったのも文庫版が発売されてからで、連載当時にシベリアン・ハスキーブームを呼ぶほどの人気作だったことさえ知らなかった。ストーリーは、H大獣医学部の学生であるハムテルと二階堂が、大学や動物病院で起きるちょっとした騒動に巻き込まれていくというコメディー。漆原教授、菱沼さん、小夜ちゃん、おばあさん、清原etc・・・・・端正なペンタッチで描かれた人物は、みんな頭はいいけど変人ばかり。そして登場する動物も可愛いけれど、みんな人間に負けず劣らずのクセ者ぞろい。そんな個性的なキャラ達の騒動が、あくまで淡々としたストーリー展開で描かれていく。どこかシュールな雰囲気さえある独特な面白さは、当時生まれて初めて出会ったもので、あっという間にハマってしまい、毎月文庫版の新刊が出るたびに、高校生の少ない小遣いをやりくりして買い集めていった。


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『動物のお医者さん』を読むと、実際に動物を見かけるたびに、あの明朝体のセリフが浮かんできて、まるで動物の声が聞こえるような気になってくる。実際ワタシも、実家で飼っているゴールデンレトリバーがボールを咥えて持ってくると「あそぼ」という声が聞こえてくるし、塀の上で寝そべっている近所のネコと目が合うと「なんやねん。ウチ今寝てるねん。ジャマせんとって」という声が聞こえてくる。もちろん、ただの思い込みである。でも『動物のお医者さん』を読んだ人なら、きっとみんなそうなるはず。

【動物のお医者さん】名言集「オレはやるぜ!」 (NAVERまとめ)

佐々木先生の描く数々の名セリフ(&迷セリフ)は本当にセンス抜群で、一度見たら忘れられない魅力にあふれている。だから強く印象に残り、いつまでも忘れられない(実際ファン同士が話すと、いつも印象に残ったセリフの話になる)。初めて出会ってから何十年経った今でも、動物を見ると彼らの声が浮かんでくるなんて。そういった意味で、自分の人生に大きな影響を与えた作品なのは間違いない。


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私には4つ上の姉がいるのだが、私が中学に入った頃にはお互いほとんど口を利かなくなっていた。特に理由があったわけじゃないけど、まあ思春期に入れば家族や兄弟を疎ましく感じるものだし無理もない。そんなある日、家に帰って自分の部屋に入ると、本棚にあるはずの『動物のお医者さん』の1~3巻が全て消えている。あれ?と思い、家中を探すと、居間でソファーに寝そべった姉が、私の『動物のお医者さん』を読んでいた。私が帰ってきたことには気づかなかったらしい。私が「おい」と呼ぶと、ようやく私の存在に気づいた姉は一瞬バツの悪そうな表情を浮かべたものの、すぐにいつものふてぶてしいカオで本に視線を戻し、ただ一言、「これ、面白いね」とつぶやいた。数年ぶりの姉と弟の会話だった。


それから歳月が流れ、思春期も遠い昔となった今では、実家で姉に会うと時々『動物のお医者さん』の話で盛り上がる。あまりマンガには興味のない姉だが、動物のお医者さんだけは家に全巻揃えているらしい。実家のゴールテンレトリバーとじゃれあっている自分の娘を見ながら姉は、「この娘がもう少し大きくなったら、動物のお医者さんを娘に読ませてあげるんだ」と言った。姪っ子も動物のお医者さんを読んだら、私達と同じように動物の声が聞こえたりするんだろうか。犬が尻尾を振りながら、ボールを咥えてやってくる。その犬を姪っ子が見て、「あそぼ」という声に気づいた時、彼女の世界はきっと広がる。






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私は部室にある単行本を読んでました。部室に転がっているだけなので、全部は読めてません。ただにゃんこと鬼ごっこに夢中のシベリアンハスキーは覚えています。
鬼ごっこに夢中のシベリアンハスキーに頭に抱きつかれたら「動物のお医者さんになれない。」という下りだけは覚えています。ウツロメさんは覚えていますか?

Re: タイトルなし 

> グンタイさん

はい、覚えてます。第42話ですね。文庫版の3巻に収録されてますよ。
もし機会があればまた読んでみてください(*´ω`)

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