ダメなのは、酒か人間か? 西原理恵子&吾妻ひでお『実録!あるこーる白書』

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アル中に、憧れてたことがある。




5年くらい前までのハナシ。中島らも、坂口安吾、開口健といった、いわゆるアル中作家の作品にハマっていたんだ。

別に彼らがアル中だからという理由で読んでたわけでは無いんだけど、酒好きの作家だけに当然酒にちなんだハナシも多く、しかも揃いも揃って文章の達人だから、たとえそれが酒にまつわる手痛い失敗談だとしても、それがまたなんとも魅力的で楽しそうに見えてしまうのだ。

加えて、学生の頃から現実逃避に飲みだした酒の量は、社会人になってからのストレスでグングン増えていった。やることなすことうまくいかず、周りの人たちと比べて自分があまりにも何も知らず、何も積み重ねてこなかったことを痛感したワタシにできたことは、ただ深夜までひとりで酒を飲み、やっぱり現実逃避することだけだった。

ビール500mlを毎晩4缶が当たり前。あるときはフルボトルの安ワインを一晩で2本空け、またあるときはウィスキーのストレートをロクに飲めもしないくせに無理矢理流し込んでは吐き、トイレの床に呻きながら突っ伏していた。朝はいつもひどい二日酔い。午前中はいつも仕事にならない。みんなから酒臭いと言われ、挙句の果てには「夜にシラフでいて、何が楽しいの?」なんて平然と口にして、周りから失笑を買っていたっけ。ああ、あの日の私に蹴りいれたい(パメラ)。



そんな自分の黒歴史を思い出したのは、西原理恵子&吾妻ひでお『実録!あるこーる白書』(徳間書店)を読んだから。

夫がアルコール依存症だったサイバラ先生、自分がアルコール依存症だった吾妻先生と詩人の月乃光司氏。2人のギャグ漫画家と1人の詩人が、互いのアルコ-ル依存の体験を語りあう対談本。お酒に振り回されて病んでいった3人の体験談はなかなかヘビーで悲惨なハナシも多いのだけど、そこはエンターテイナーの3人、自虐的なギャグや毒のあるツッコミで終始明るいムード。とても読みやすい。

ただ、サイバラ先生のマンガでよく登場していた夫の鴨志田穣氏(故人)が実際はかなりひどい症状で、豪快な女傑のイメージが強いサイバラ先生が精神を病むほどに追いつめられ、「(夫に)とにかく毎日死んでほしいと願っていた」トコロまで家庭が崩壊していたことというハナシには本当に驚いた。アルコール依存症は自分だけでなく、周りの人間関係まで壊し、そして誰からも同情されないゆえに孤立していくという、どんどん負のスパイラルに落ちていく、どこまでも厄介で悲惨な病なのだ。

ではアルコール依存症に打ち勝つにはどうすればいいのか? 本書ではアルコール依存症を「病気」として認識して正しい知識を持ち、医者や専門家などの外部の人間に積極的に頼ることが大事だと語る。

特に印象に残ったのが「底つき」と「イネーブラー」という言葉。「底つき」は依存者が家族や友人からも見放され、体もボロボロになり、とことん堕ちるところまで堕ちて、「自分はこのままではダメだ」と依存者自身が強く認識すること。つまり依存者自身が「自分がアル中だ」ということを認識し、「治したい」という強い意思を持たなければ依存症は治らない。

そして「イネーブラー」とは、依存者を助けようとして間違った支援をしてしまい、結果的に依存者の症状を進めてしまう善意の加害者のこと。月乃氏の、「僕、中島らもさんすごく好きなんですけど、本人の才能と、酒での奇行がごっちゃにされてると思うんです。(中略) 厳しい言い方をすれば、周りの人々が支えていたから、死ぬまで飲んでたんですよ。」という言葉は、同じ中島らもファンとして非常にグサッときた。酔いどれ作家として敬愛され、酔って階段から転んで死んじゃった中島らも。非常に彼らしい死に方ともいえるけど、でも、本当をいうなら、やっぱり今でも生きていて欲しかった。もっともっと、中島らもの言葉を読んでいたかった。




ワタシは結局、アル中になれなかった。あるとき風邪を引いて寝込み、さすがに酒を飲む元気もなく1週間ほど酒無しで過ごした。そして風邪が治ってからも、何となくそのまま酒をやめていたら、毎朝の体調がすこぶる良いことに気付いたのだ。

二日酔いがなくなったんだから、当たり前のハナシなんだけど、酒を控えたら体がこんなにラクになるということに気付いてから、わざわざしんどくなるために酒を飲むのが心底バカらしくなった。もちろん現実は特に好転したわけでもないのだけど、しんどい毎日をしんどいカラダで過ごしたら、ますますしんどくなる一方なのは明らか。
そんなわけで断酒とまではいかないが、少しづつ酒量を減らしていき、今では一晩に350MLのビールかハイボールを1缶、DVDを見ながらチビチビ飲む程度になっている。まあ、そもそもアルコールに強い体質でも無かったし。


ただ、それでもアルコール依存症は決して人ごとではない。自分は絶対大丈夫、と思っていても仕事や生活で多大なストレスを抱えてしまうと、結果として自動販売機やコンビニで簡単に手に入る酒にハマりこむ可能性は誰にだってある。人間はどこまでも弱く、脆い。ワタシだって、この先アル中になっちゃうことだって、十分にありうることなんだ。

本書はアルコール依存症の入門書として、まさにうってつけだと思う。せひ読んでみてほしい。あなた自身を守るために。そしてあなたの大切な人を、泣かさないために。




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ウツロメさんもそんなに苦しんでいたんですね。アルコール依存症の人のIQは平均より高い、という話に納得です。そしてそれに正面から向き合えたウツロメさんを尊敬します。

私はいまだにアルコールに負けています。今日も安宿でビール飲みながらレポート書いてます(。>д<)

Re: タイトルなし 

> グンタイさん

コメントありがとうございます!

お酒飲むと、リラックスしてかえって仕事がはかどることはありますよね。
まあたいていの場合は途中で寝ちゃうんですけどw
お仕事お疲れ様です。くれぐれも無理はなさいませんように。


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