どこまでも美しい、夢の世界で  宮崎駿「風立ちぬ」

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宮崎駿 監督最新作 「風立ちぬ」を観てきました。







大正から昭和の激動期に、時空を超えて出会ったイタリアの設計者:カプローニ伯爵に導かれながら、自分の夢見る飛行機を作ることに人生をかけた青年:堀越二郎の青春記。

実直で颯やかな主人公、優しい母親、兄思いの妹、共に実力を認め合い切磋琢磨する親友、厳しくも暖かい上司、熱い思いを共有して奮闘する職場の人々、そして主人公をただ一途に想う美少女、どこまでも純粋な出会いと恋と別れ。

嫌な人間なんてここには誰ひとり出てこない。みんな凛として、妬まず、そねまず、ただ自分の人生を懸命に生きている。戦前の日本が持っていた美徳とノスタルジアに満ちあふれた世界。

二郎が人生をかけて作り上げた飛行機は戦闘機「零戦」として結実し、戦争の敗北によって無惨な結末に終わる。自分が追い求めた飛行機、そして愛する者も失った二郎。しかしこの映画は、そんなの二郎の絶望的な挫折でさえ、夢を追い続けた者の美しさとして描き、切なさと感動の余韻を残しながら終わっていく。

ああ、この映画は、夢だ。
どこまでもどこまでも、ただひたすらに美しい、夢。

「飛行機は美しい夢だ」、「そして設計家は夢に形を与えるのだ」。
カプローニ伯爵のこの言葉は、宮崎駿にとってのアニメに対する想い、そのものだ。
アニメは美しい夢だ。そしてアニメーターは夢に形を与えるのだ。
この「風立ちぬ」は、そんな宮崎駿が自分の好きな戦闘機への想いと、昔の時代と人々への郷愁を、自らの持ちうる最大限の技術と愛情を込めて描いた、一大メルヘン叙事詩といえる。

だからワタシ、映画を見終わったときは、あまりに綺麗なモノばかり見せられたもんで、頭の中が真っ白になってしばらくポカーンとしてました。なんか、すごく綺麗な風景を見せられて感想を求められて、ただ「いやーあのその・・・キレイですよね」としか言い様がない、ちょっと困ったような気分になっちゃって。

個人的には、「千と千尋の神隠し」以降の宮崎作品の中では、この「風立ちぬ」が一番好きです。こども向けやファンタジー系を期待して観るとガッカリするでしょうし、人によって大きく評価が分かれると思いますが、作品のクオリティは文句なしの出来なので、未見の人は観て損無しです。ていうか、御年72歳の老人がこんな瑞々しいモノをまだ作れるなんて、本当スゲエわ、このジイさま。

でも、もう1回「風立ちぬ」を見たいか?と聞かれると、なんだか少し、躊躇してしまいますね。何度も繰り返して見るよりは、ただ1回だけ観て、そのときの感動と余韻にいつまでも浸り続ける。そういう味わい方が一番似合う作品なんだと思います。夢は一度きりだからこそ、永遠に美しく輝き続ける。そんなカンジがして。



・・・あ、主役の庵野秀明の声、最初こそ違和感ありましたが、そのうち気にならなくなりました。上手いか下手かと言われたら、そりゃもうヘタですけど(笑)。
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